「何うしたと云ふんだい。」――「ちえツ、馬鹿だな。」
わけもなく、哄笑と一処に、四人の者は手を執り合つたり肩を突いたりした、たゞ、それが久し振りに出会つた挨拶の代りであつたらしい。――見ると遠来の友達等は、登山家のいでたちで皆な夫々はち切れさうなリユツク・サツクを背中につけてゐた。――昂奮して、とりとめもない乱暴な言葉を喚き会ひながら四人横隊になつて腕を執つたり肩を組んだりして石段を上つた。
「これで一先づ山を極めたといふわけなんだよ。――ブラボー。」
「旗を持つて来たぞ。朝になつたら掲旗式を行ふんだぜ。」
「守夫――お前にはラツパ吹きを任命する。」
何うも調子が高過ぎると思ふと、皆なは道々ビールのラツパ飲みをしながらやつて来たのだなどと気焔を挙げた。
「お前が東京へ行くんなら、この家を俺達に引き渡せ。俺達が入つてしまへば、たゝき壊されるまでは動きつこはないんだから。」
「俺達はこゝを陣営にして、ロビン・フツド生活を営む決心でやつて来たんだ。」
「竹下と村井は、生活と芸術に就いてさんざんに悩んだ上句、自分達の芸術の樹立を念じて、生活は最も原始的に、バアバリステイクに片づけて――ネオ
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