……「そんな風になるとね。」と、周子は、さつき私が何か話し出したことに就いての続きらしく、呑気さうに良子と語らつてゐた。「――一番気になるのは口のにほひなんだつてさ、自分の!」
 おや、俺のことかな! ――微かに私は、ギクリとした。
「へえ! 変ね。」
「あたし始めは冗談かと思つてゐたら……」
「冗談でせう。」
「さうかしら?」
「いや……」と、私は云ひかけて彼女達があまり軽々しく話し合つてゐるのに気が引けて、仕方がなく笑ひを浮べてゐた。(それにしても周子の態度が何だか可笑しいな、あいつはそんなに軽い気持なのかしら? それならば何もこの間うちから良子の前などを慮つて、あんな不便を忍んでゐる程のこともなかつたか?)――私は、他人《ひと》の前では、外出の時妻から帽子をとつて貰ふのさへ好まなかつた。他人の前でなくても、妻から着物を着せかけて貰つても背中がムズ/\するのであつた。
 私は、二人の顔をそつと見比べて、若しこの二人が自分の妻の候補者として並んでゐるのだとすると、果して自分は何方を選むだらうか、良子の方が美人かな、多少は? いや、よく/\見るとさうでもないかな? いや、さうだらう、
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