毒気
牧野信一
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)碌々《ごろごろ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)長い間|放《ほう》つて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ごろごろ[#「ごろごろ」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ホラ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
[#5字下げ]一[#「一」は中見出し]
「傍の者までがいらいらして来る。」
私が、毎日あまりに所在なく退屈さうに碌々《ごろごろ》としてゐるので、母も、相当の迷惑をおしかくしながら、私のために気の毒がるやうにそんなことを云つた。――「折角、みんなと一処に来てゐるのにね。」
「えゝ、だけど別段、――別段、どうもね、これと云つて……せめて海でもおだやかになつて呉れると好いんだがな。」と、私はぼんやり天井を視詰めたまゝ呟いだ。
「何んのために来たのだか、解りはしないね、これぢや――」
私達が、何か少しでも保養のためを持つて来てゐるんだ、といふやうに思つてゐる母は、私の所在なげな様子を嗤ふやうに云
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