れよう!)節面白くインデアン・ダンスを試みずには居られなかったのである。
僕は、これから三人の旅人が不思議な旅路をたどり、様々な出来事に出遇うであろうことを空想し構想し得るのがこの上もなく愉快であった。あまり長い間僕は「無」の放浪に、そして、彼らの、これ以上進みようのない不和の姿を切なく見守り続け過ぎた。僕は、「兵士の歌」のAを、バンヤンの嶮路《けんろ》に向けて悪魔と戦わせてやろうか、気難し屋のBをラ・マンチアの紳士と相対せしめて問答させてやろうか、ピザの学生をスウィフトの飛行島に赴かせて、ラガド大学の科学室を見学させて度胆《どぎも》を抜いてやろうか……などと思うだけでも、面白さにわが身を忘れた。
「呪《のろ》われた原始哲学よ、嗤うべき小芸術よ、惨《みじ》めな昨日までの感情《アフェクテ》の国土よ!」
僕はこんなことを呟《つぶや》きながら、ふと気づくと村の街道に降り立っていた。僕は、鞭《むち》のように細長い剣を持っていた。これも壁に“WASEDA”のペナントの下に、十字を切って懸けてあった練習用の Fencing Sword の一つであった。これは伊達《だて》に飾ってあるのではない、
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