見するかも知れない、俺は、しさいな研究をして見たいんだから――」
「馬鹿にしてゐらア!」
Nは、生意気な中学生らしくして歯切れよく笑つた。――「清々としたんなら、早く御飯を済してしまひなさいよ。」
彼は、徐ろに胸を拡げて深呼吸をした。
Nは、さつきから彼の傍に腰を降ろして、その洗面の終るのを待つてゐたのだ。
「何分位ゐそれをやらないと落ち着かないのさ?」と、Nは、何となくワザとらしく見えてならない彼の深呼吸を懸念した。
「さうだなア? どうしても二十分位ゐは続けなければなるまい。」
深呼吸などは、滅多に行つたことはないにもかゝはらず彼は、そんなことを云つた。
「あゝ、面倒臭いなア!」
Nは、さう云つて口笛を吹きながら、爪先きで地面を蹴つてゐた。彼は、
深呼吸といふやつは、これア仲々具合が好さゝうだな、これから毎朝行つてやらうかな! などゝ思ひながら、空を仰いで深重にフーフーと呼吸してゐた。
「今日こそは、泳ぎに行つて見ようね。僕は、そのつもりなんだぜ……あゝ、猛烈に暑くなつてきたぞ。」
「いざとなると俺は、厭になるんでね。」
「運動しないと毒だぜ。」
「生意気なことを云ふね
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