々しい調子で、
「水の精ニツケルマンの独り言のやうだらう――ブレツケツケツ、ケツクス!」
「そんなものは知らないよ。」
「では――」と、彼は云つた。「チエツ! チエツ!」
「…………」
「いや、疳癪を起したんぢやないがね……」
「起したつて怖くはないよ。ブレツケツケツ、何とか位ゐ!」
「チヨツ!」と、彼は舌を鳴した。
「出たら目のジヤツズ・バンド。」
「チヨツ、チヨツ、馬鹿ア」
彼は、変な形容でからかはれるのが厭だ、といふ風にふざけた苦い顔をして、胸をさすりながら
「あゝ、これで一先づ清々としたんだ。」と云つた。そして、しさいらしく首をかしげて
「チヨツ、チヨツ! チヨツといふ小言を、英語では、Tut, Tut, Tut! と書くんだつたかね、たしか。……フツ、ものは聞きやうで何とでも云へるものさ、何とでも喩へられるものか……」などゝ呟いた。
「何アんだ! そんな変梃なことを考へてゐたのか、つまらない。僕ア、また……」
「そこでN、一寸軽い疳癪を起してさ、チヨツ! と、舌を鳴らして見ないか。Tut! とも響くかどうか、或ひはまた、チヨツ! や Tut! よりも一層適切な感投詞を俺が発
前へ
次へ
全30ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
牧野 信一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング