はれた程の驚きに打たれた。
「ボクの方が――」と、彼女は云つた。「余外な面倒《トラブル》を感じなければならない。……いゝえ、計画《プラン》さ? どんな種類の?」
「英語をはさまれるとオレには、意味がわからなくなつてしまふんだよ。」
「ワタシが観光団員でなかつたことは、お前にとつては随分の幸福なのね。」
日本語が出来る、といふ程の意味なんだな! などと私は、いちいち反省して見なければならなかつた。
「それだつたらオレ達は、交際をしなかつたゞけで、オレは却つて……」
「惨めなプランを探られる思ひもせずに済むわけ……」
おやッ、と私は思つた。だが直ぐに、意味あり気に解釈しようとするのは惨めなわけだ、と気づいて
「ずつと向方《むかふ》に見ゆる島は、浮島といふんださうだ、三|哩《マイル》しかないといふ話だ。」
そんなことを説明した。この程度の話でないと私には無理だつた、――おそらく今迄の会話だつて彼女にして見れば、それ程呑気なものに違ひない、辻褄が合はなくなつた時に、考へて見るなんていふ面倒は止した方が得だ――私は、そんなに思つた。
「おゝ、さう。」
彼女は、熱心な眼で沖を眺めた。「今度
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