の午後で、広い運動場には子供が二三人隅の方で遊んでゐるより他に人影はなかつた。
そこは、旧式の運動の盛んな学校だつた。卒業生の大半は、陸軍士官学校と海軍兵学校を志願した。運動場の周囲には様々な体操器具が堂々と立ち並んでゐた。――十二階段、平行棒、飛越台、木馬、棚、幅飛び、棒飛び、梁木、遊動円木、天秤台、機械体操、射撃場、名前は忘れたが、穴の上に丸太が渡してある処――その上で二人の者がそれぞれ一本の腕で争ひ穴の中へ落し合ふ場所である丸太橋――。
「ここで暫く遊んで行きませう。」と、Fが先に云ひ出した。私は、厭だと主張したが、照子は聴き入れずに、
「皆なの運動を見物しようぢやありませんか。」
と、云つて山村や龍二を促した。
「うん、やらう。」と山村は云つた。
「俺は、暫くやらないから巧くやれるかどうかね。」などと云ひながらも、龍二も賛成した。そして私達は、先づ機械体操の前に集つたのである。山村と龍二は、シャツ一枚になつた。
Fと、照子と、私は隅の芝生に腰を降して熱心な眼を視張つた。
「妾は、未だかういふ種類の運動を見たことがない。」と、Fは云つた。
「僕は、かういふ種類のミリタリステ
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