れからそれへ花やかな雲のやうな繰言がむく/\とわきあがつて来て、おさへきれさうもなかつた。そして、凝つと腕組をして息を殺して見ると、小屋全体が徐ろに揺れて、宙に浮びあがつて行く通りに思はれた。――どんなに揺れても、火のまはりで談笑してゐる三人が、ありのまゝの姿でくつろいでゐるのが、馬鹿に奇妙だつた。
 若者は、気が遠くなりさうだつた。――どうして好いのか? 何をどうして好いのか? ……斯う心持が、にぎやかで、面白く、そして、胸が激しく鳴るのは、面白さからでもないやうな――悲し気な心地がしたり何かして、このまゝ凝つとし続けたら昏倒でもしてしまひさうな不安に襲はれたりした。
「お前さんは強い。これだけ飲んでもビクともしないのは、さすがに若い者だな――ミヤツでひとつ今晩は大振舞ひをやらうぢやないかね。」
「……強いのだか――」
 弱いのだか? 自分には解らない――と若者は云はうとしたが、弱い! と云ふのも何だか具合が悪いやうな、また、強い! などゝ云ふのも自慢見たいな! それから、酒飲みのやうに思はれたりするのも口惜しい見たいな! ……いろ/\と若者は、止め度もない気おくれがしたりして、焦れ
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