白孔雀のやうなアルジエリア・マンに包まれて、婀娜たる羽根扇を擬して、片脇には胡桃色の軽快なリイガルを抱へ、脚には七宝を鏤めた鞣皮のサンダルを結んだ。そしてマントの隙間から緑色の天鵞絨に馬鞭草《うまつゞら》の唐草模様を刺繍したタイツの胴には、炎ゆるやうなタイア染のバンドが隠見された。――これらの装ひは、去年の春私達が彼女の誕生日を祝福して、仮面舞踏会を開いた時に色紙やカーテンを材料にして作成した古《オールド》ノルマンデイの原始族の模倣品で、バスケツトの中に丸め込まれてあつたのを彼等は何かと思つて験めたところが、やあ、これは紙屑か! と気づいたので、売声を発するまでもなくポンと窓外にはふり出したのである。だから私は今、七宝を鏤めた等々と誌してしまつたが、それにはカツコを附して述さなければ当らぬ態の、何も彼も絵具と色糸との加工品である――実際、あたりの夜気は、上着も外套も持たなかつた私達には稍薄ら寒かつたので、そんなマントも相当の必要物となつたわけであつた。
「しかし……」
と私は彼女の肩に敬々しく手をかけながらカラス面の下で唸つた。私は、頬に熱い雫が垂れてゐるのを感じた。創作創作――など
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