ゾイラス
牧野信一

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)詩《うた》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|安定律の測度器《スタビリテイ・メーター》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)働いても/\
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 海の遠鳴りをきゝながら私は、手風琴を弾いてゐた。そのダクテイルが、ひらひらと潮の音に逆つて低く高く青白い虚空を衝いて飛んで行くと、私の魂も夢も片々たる白い蝶々と化して、波を乗り越え、宙に翻つて、無何有の沖へ沖へと雪崩れを打つて消えて行つた。
 私は、脚を卓子の上に重ねて、椅子の背に頭を載せかけたまゝ「海賊」の詩《うた》をうたつてゐた。
[#ここから1字下げ]
[#ここから横組み]
“…… …… ……
 Ours the wild life in tumult still to range
 From toil to rest, and joy in every change.”
[#ここで横組み終わり]
[#ここで字
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