R水準1−2−22、66−4】明となるのである。芸術は非論理的と考えられる。芸術的直観とは、行為的直観において、物が自己を奪うという方向において成立するものなるを以て、非論理的とも考えられるが、具体的論理の立場からは、芸術的直観もその一方向として含まれなければならない(芸術も理性的でなければならない)。
 創造の立場においては過去と未来とが絶対に相対立するものでなければならない。しかもそれは単なる対立ではなく、矛盾的自己同一的対立として、作られたものから作るものへと創造的に動き行くのである。この故に世界は矛盾的自己同一的現在として自己形成的である、即ち意識的である。過去と未来との矛盾的自己同一なるが故に、意識的なのである。世界は絶対の過去として必然的に我々を圧して来る。しかし矛盾的自己同一的世界の過去として、単に因果的に、我々を圧するのでない。単なる因果的必然は、我々の自己を否定するものではない。それは歴史的過去として我々の個人的自己の生命の根柢に迫るものでなければならない、我々を魂の底から動かすものでなければならない。行為的直観の立場において、歴史的過去として、直観的に我々に臨むもの
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