、深く取糺しもせずに只管心??ケたのが余り馬鹿馬鹿しい、余は何たる愚人だろう、夫にしても秀子とても、既に主の有る体なり、今までに余に打ち明けてよさ相な者だ、余の思いが日一日に深くなる事は秀子自ら知って居ねば成らぬのにと、余は殆ど恨めしく思うたが、秀子は静かに「エ、私の未来の所天、飛んでも無い事を仰有る、私は未だ所天などを定められる身の上では有りません」
 所天で無くて差し図するとは聊か怪しいけれど未だ未来の所天が定まらぬとは何よりも安心だ、余は我知らず笑顔と為って、今疑った詫びを述べようとして居ると、此の所へ遽ただしく虎井夫人が遣って来た、夫人はいきなり秀子の手を取り「大変ですよ、あの人達が来ましたよ、早くお逃げなさい、サア早く」と秀子を引き立て、殆ど悔しそうに「茲まで漕ぎ着けて彼の人に逢うとは実に残念です」何の事やら余には少しも分らぬが、早く逃げよとは尋常の事では無い、虎井夫人は秀子が急に逃げようともせぬを悶《もど》かしがり「到底逢わぬ訳には行きますまいが、兎に角、暫し他の室に避け心を落ち着けて夫からお逢いなさい、ソレ斯う云う中に最う彼処へ遣って来ますよ」と云って無理に秀子を引き立て
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