と踊れば後で叱られるかも知れませんから」と益々異様な言い様だ。後で叱るなどとは父か所天《おっと》で無くては出来ぬ事だ、余「其の人は誰ですか。私の叔父ですか」秀子「イイエ、阿父《おとう》様では有りません」早や阿父様と云うは聊か耳立って聞こえるけれど、是は先日既に余の叔父が、爾後は阿父様と呼ぶ様に厳重に言い渡したので有る、余「叔父でなければ誰ですか、誰ですか、其の人の名を仰有《おっしゃ》い」秀子は余の熱心な有様が可笑いのか「オホホホ、其の様に仰有らずとも今に分ります」余「分る事なら今仰有い」秀子「権田時介と云う弁護士ですよ」余「エ、権田時介ですか」と余は驚いて叫び「権田時介なら私も知って居ますが彼はアノ殺人女の――」秀子「ハイ人殺しの裁判を受けた輪田お夏を弁護した其の人です」余「何故貴女は彼を夫ほど尊敬します、彼は貴女の何ですか」秀子は少し口籠って「何で有ろうとあの方の差図には、私は従わねば成りません」余「分りました、彼は貴女の未来の良人ですね」若し未来の所天ならずば、何で差し図などする者か、するとも何で従わねば成らぬ筈が有る者か、余は今までに此の女に許嫁の所天などが有ろうとは思いも寄らず
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