すと問い掛けた。
秀子は事もなげに「其れが此の塔を立てた事を指すのでしょう、記録も色々に成っていて、諸説|区々《まちまち》と云う有様で確かに斯うと断言は出来ませんが、私の最も確実と云うのは此の塔を建てた時代が丁度|閣竜英《くろんうぇる》の革命の時で有っただろうと思います、此の革命と前に宝を盗まれた時の内乱とは二百六七十年ほど時代も違い事柄も違って居ますけれど「逆焔仍熾なり」とは逆徒の勢が仲々盛んだとは閣竜英の徒を指したのでしょう、閣竜英の改革は御存じの通り千六百四十年代の事ですから今より凡そ二百五十年以前です爾すれば此の塔の年齢も今は三百五十歳ほどに当るのです、世間では数千年を経た塔だと云いますけれど爾うは経て居ぬのです、若し其の時に宝が水の底から出たなどと分れば閣竜英に没取せられる事は無論ですから、何うか之を無事に隠して置きたいと云うので此の様な塔を立て、爾して暗に自分の子孫へ知らせる様に、咒語を作ったのです「深く諸を屋に蔵す」との語の中に、深く塔の底へ蔵めて置くと云う意味が見えて居るでは有りませんか」
第百十三回 人生の沙漠
是だけの説明を聞いて見れば最早咒語の意味は疑う隙
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