実子を一人儲けました、其の実子は父から宝の事を聞いては居ますけれど、何所に何う成って在るかは知らず、是も我子に宝の行方を詮索せよと遺言して死に、其ののち代々子も孫も唯宝の行方を尋ねるのみを生涯の目的とし子々孫々同じ様で暮しましたが、遂に此の塔を立てた人の世と為り、漸く僧侶の仕業で水の底へ沈んで居る事を調べ上げました「妖※[#「※」は「かみがしらの下に几」、読みは「こん」、197−上6]奪い去りて、夜水竜哭す」とは即ち僧侶が水底に沈めた事を指したのでしょう「言《ここ》に湖底を探って、家珍※[#「※」は「きへん+賣」、読みは「とく」、197−上7]に還る」と有るので、遂に其の人が湖水の中から其の宝を取り出した事が分るでは有りませんか」
 成るほど爾う聞いて見れば咒語の意味は実に明白である、今まで無意味の文字と云われ、或いは狂人が囈言《たわごと》を記したに過ぎぬなどと笑われた彼の咒語は、其の実苦心惨憺の余に成った者で、之を作った当人は一字一字に心血を注いだに違いない、余は之まで聞いて、思わず目の覚めた様な気がして、腹の中に彼の咒語を誦しつつシテ「逆焔仍熾なり、深く諸を屋に蔵す」とは何の意味で
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