輪田長三に違いないと余は勿論推量して居た、推量しては居たけれど、お浦が随意に自分の口から言い切るのを聞こうとて待って居たのだ、愈々幽霊塔にあった此の頃の幾秘密は、彼高輪田長三に繋がって居るに違いはなく、お浦の口から分って来るに違いはない。

第九十八回 危険な問題

 幾等悪心のお浦にもせよ、高輪田長三の妻に成ったとは聊か憐れむ可き堕落である、余は思わず嘆息して「貴女は罪な事、邪魔な事ばかりを目《もく》ろむから此の様な始末に成ったのです」と慰めるのか罵しるのか自分にも分らぬ様な言葉を吐いた。
 お浦は此の言葉にワッと泣き伏した、爾して泣き声と共に叫んだ、「道さん、道さん」斯うは云ったが流石に余を「道さん」などと幼名を以て慣々しく呼ぶのが気恥ずかしく成ったのか「丸部さん」と云い直して更に「貴方は何にも知らぬから其の様に私をお責め成さるのです、聞いて下さい、何も彼も云いますから」勿論余は聞かねば成らぬ、全体お浦が何うして幽霊塔の書斎の中で紛失したか、又其の後お浦の死骸として堀の中から引き上げられた女の死骸が何うしてお浦でなかったのか、此の辺のことは奇中の奇で、お浦自身の説明を聞く外はない、
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