さん貴方は本統に人間です、決して鬼では有りませんよ、自分の愛する女が、立派に此の世を送られる道があるのに只自分の一時の満足の為に其の女の生涯の幸福を奪い、人殺しと云う恐ろしい罪名の下へ女の一生を葬って了おうと云うのですから、貴方の愛は毒々しい愛と云う者です、人を殺す様な愛です、女に一生を誤らせる様な愛です、秀子も後で此の様な次第を知れば定めし有難いと思いましょう、爾して貴方を邪慳な人だなどと恨みはしまい、何つか其の愛で秀子を濡衣の中にお埋めなさい」
何たる恐ろしい言葉ぞや、余は此の時介を敵としては到底秀子の生涯に何の幸福もないを知った、余が秀子と婚礼すれば其の日から此の男は直ちに復讐の運動を始め、真に余と秀子とを不幸の底へ落とさねば止まぬであろう、日頃は仲々度量の広い、男らしい男で、幾分の義侠心を持って居るのに恋には斯うまで人間が変る者か、真に此の男の愛は余の愛よりも強いには違いない、夫を知って猶も秀子を我が妻とし、今此の男の云うた様な儚い有様に若しも沈ませる事が有っては、全く余の愛は毒々しい愛と為る、幾等残念でも此の男に勝利を譲る外はない、余は断乎として「承知しました、権田さん、秀
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