適して居る、権田とても随分頑丈な男では有るが、荒仕事に掛けては大力の評判の有る余に及ぶ筈はない、彼自らそうと知って其の身は戸を守る役を勤め荒仕事を余に振り分けたは当意即妙と賞めても好い、探偵は余の手の内で悶くけれども宛も悪戯児供の手に掛かった人形の様である、グーの音も出る事でない、権田は此の様を見て「好く遣った、其の手を少しでもお弛め成さるな、探偵などと云う者は得て呼子の笛を鳴らします、其の笛を鳴らしたら、万事|休焉《きゅうす》です、今に私が呼吸の根を止める道具を持って来ますから」と云って次の室へ退いた。

第九十回 鸚鵡返し

 探偵森主水の呼吸の根を止めると云って、権田時介は何の様な道具を持って来る積りか知らん、次の室へ這入って了った。まさかに探偵の息の根を本統に止める訳には行かぬ、余には余だけの考えがある。
 けれど森主水は必死の場合と思ったか、時介の恐ろしい言葉を聞いて益々悶掻き始めた、余は実に気の毒に堪えぬ、然り余の心には充分の慈悲があるけれど余の手先には少しも慈悲がない、彼が悶掻けば悶掻くだけ益々しめ附ける許りである、此の様を見兼ねたか、松谷秀子は青い顔で余の前に立ち「此の
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