方が幽霊塔で私の挙動を見張って居た探偵ですか、若しそうならば何うか其の様な手荒な事を仕て下さるな、私の為に人一人を苦しめるとは非道です、私は捕縛せられようと、何うされようと最う少しも構いません」健げなる言い分では有るけれど余は唯「ナアニ」と云って聞き流した、思えば実に邪慳な乱暴な振舞いでは有る、余は自分で自分が非常な悪人に成った様に感じた、若し他人が女の為に探偵を此の様な目に逢わせたならば余は其の人を何と云うであろう、決して紳士と崇めは仕まい、それもこれも皆秀子の為だから仕方がない。
其の中に時介は次の間から出て来た、見れば四五人の人を捕縛しても余る程の長い麻繩と、白木綿の切れとを持って居る、彼は縛った上で猿轡を食《は》ませて置く積りと見える、余の了見とても詰りそれに外ならぬ、唯秀子を無事に落ち延びさせる迄此の探偵の手足の自由を奪い、爾して声を出させぬ様に仕て置けば宜いのだ、時介は余に向かい「丸部さん、少しも手を弛めては了ません、足の方から私が縛りますから、ナニ私は水夫から習って繩を結ぶ術を心得て居りますよ、私の結んだ繩は容易に解ける事では有りません」と云い早や探偵の両足を取り、グル
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