に秀子の其の創の手を弄ぶ様にして居る、爾して彼は説き明かす口調で「丸部さん、私がアノ顔形の復写を何うしたとお思いです、直ぐに私は無名で以て秀子に送り届けました、定めし秀子は驚いたでしょうが、驚かせるのが私の目的です、驚かせて遣らねば秀子は私の許へ来ませんもの」是だけ云って余の顔を見、余が聞き入って居るを見届けて「イヤ全くですよ、秀子は近来、貴方にさえ保護されれば此の世に少しも恐い者はないと思ったか、私へ対しての振舞いが甚く冷淡に成りました。用事の有る時は相談も仕ますけれど、不断は殆ど捨てて顧みぬ有様です、併し私はそう冷淡に取り扱わる可き筈で無い、秀子の為に命の親とも云うべき者です、夫だから何うか此の家へ呼び寄せて悠《ゆっく》り諭し度いと思い、色々考えて見ましたが、夫には顔形を以て威かすに限る、無名で以てアノ顔形を送りさえすれば、秀子は自分の身の弱点を思い出し、此の秘密が消えぬ以上は何うしても権田時介の保護を離れる訳に行かぬと思い、且は顔形の送り主が何者であるか之に対して何の様な処分をすれば宜いか此の辺の相談に必ず私の許へ馳け付けて来よう、来れば何の様な話でも出来ると私は斯う思いました、
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