かに養蟲園の事柄から巴里へ行って来た次第をまで述べ終り、「多分貴方が秀子を劫《おびや》かす為に顔形の複写を作らせただろうと鑑定しましたが、其の複写を何うしました」権田「お察しの通りに致しました、帰ると直ぐに秀子の許へ送りました」余「エ、既にですか」権田「ハイ既にです」余「爾して其の結果は何うなりましたか」権田「私の予期した通りになりました」
余は今以て秀子を気遣う心が失せぬ、畢竟其の心が失せねばこそ、此の通り権田の許へも立ち寄った訳では有るが、此の言葉を聞いては猶更気遣わしい心が増した、秀子が余の叔父に毒害を試みた事が何うも確からしいとは云えそれでも無暗《むやみ》に秀子を窘《いじ》めて懲らせようとは思わぬ、何うか穏便な取り計いで、余り窘めずに方を附けたい、余「権田さん、夫は甚いと云う者です、秀子は昨今身に余る程の心配を持って居ますのに夫を又劫かすなどとは余り察しのない仕方では有りませんか」権田「イヤそれもこれも総て貴方の所為です、貴方が秀子の心を奪うたから私は止むを得ず邪慳な挙動に出るのです」余「エ何と、私が秀子の心を奪うた」権田「勿論です、秀子は本来私の妻たる可き女です、最う貴方は
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