子に生れ変ったのです、誰が見たとて同人と思わぬは無理もありません、けれど造化の作った夏子の美しさと私の直した秀子の美しさと何方《どちら》が優って居るでしょう、素より夏子の美しさは此の上のない階級でしたが秀子のも矢張り此の上の階級はありますまい、私は之で以て造化の美術的傑作品をポール・レペルが傷つけたという非難は逃れ得た積りです、若し強いて双方の間に優劣があるとすれば、夏子は美しさよりも愛らしさが優り、秀子は愛らしさよりも美しさが優って居るとでもいうのでしょう、一方は天真爛漫の美で、一方は研《みが》ける丈研き揚げた美という者です、是だけの違いは有っても、其の実は同じ者だという事が、能く其の顔形を見較べれば自ら合点が行きましょう、エ、丸部さん、未だお疑いですか。夏子と秀子を全く別の人だなどと、まさかに最う、些《すこ》しの疑う余地もありますまい」
勝ち誇る様な口調で、先生は長々の講釈を結んで了った、余は実に情けない、余が世界に又とない美人と思い、未来の妻ぞと今が今まで思い詰めた松谷秀子が其の実は養母殺しの罪に汚れ、監獄の中に埋まって居た輪田夏子だとは抑《そもそ》も何たる因果であろう、顔は幾
前へ
次へ
全534ページ中348ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング