貴婦人客が尋ねて来ます」
第七十九回 一点の望み
先生は語を継いで「通例髪の毛の色を直すには染料を用います、けれど染めて直すのは誰にでも出来る事、学者を以て自ら居る私の様な者が研究すれば恥になります、髪の延びるに従って幾度も染め直さねばならぬ様な方法は技術ではありません、学術的とはいわれません、私の方法は、或る薬剤の注射により、髪の根にある色素という奴を変性させるのです、根本的の手段です、一旦色素が変性すれば幾度髪の毛が生え替えても又幾等長く延びて来ても其の色は一つです、一度直せば生涯再び手を入れるに及びません、いわば先ず造化の仕事で人間業ではないと云っても好いのです、唯其の中に難易があり、薄い色素を濃くするは易しいですが、濃い色を薄くするは極めて困難な事柄です、秀子嬢の髪の毛は濃い色を薄くしたので、仲々手数が掛かりましたけれど、充分の報酬を得ましたから少しも申し分はないのです。
「次は顔の形ですが、先ず其の顔形を見較べて私の言葉の嘘か実《まこと》かを判断して戴きましょう、私は兼ねて小さい動物に試験して身体を細くする術を発明しました、是も薬剤の力です、或る薬剤を食事の度に肉類と一
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