比ぶれば、確かに玉と石ほどの相違はある、けれど秀子の顔を写した者には違いない、人間業で秀子の顔を、他の品物へ写すとすれば是より上に似せる事は到底出来ぬ。
けれど、何が為に秀子の顔形が人殺しの牢死人輪田夏子の顔形と共に、此の先生に保存せられ、余の眼前へ持ち出されたであろう、夏子を秀子の前身だといい、秀子を夏子の後身だというのだろうか、其の様な意味にも聞こえたけれど余りの事で合点する事が出来ぬ、牢の中で死んだ夏子と、余の未来の妻として活きて居る秀子と、何うして同じである、養母を殺すほどの邪慳な夏子と一点も女の道に欠けた所のない完全な秀子と何うして同じ人間である、余は遽しく先生に問うた。
「秀子の顔形と夏子の顔形との間に何の関係があるというのです」
先生は少しも騒がぬ、少しも驚かぬ、寧ろひとしお落ち着いて、誇る様な顔附きで「是で私の手腕が分ったでしょう、斯様な事に掛けては、此のポール・レペルは今日の学者が未だ究め得ぬ所をまで究めて居ります、電気、化学、医療手術等の作用で一人の顔が、斯うも変化する事は、殆ど何人も信じません、政府と雖も信じません、信ぜねばこそ今までポール・レペルの職業が大し
前へ
次へ
全534ページ中335ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング