た妨げを受けずに来たのです」余「では秀子と夏子と同じ女だと仰有るか」先生「勿論一人です、秀子が即ち夏子です。夏子が牢を出て、其のままの顔では世に出る道もない為に私へ頼み、今の秀子の姿にして貰ったのです、名を替えた通りに姿をまで変えたので」
余は只恐ろしさに襲われて、訳もなく二足三足背後の方へ蹌踉《しりぞ》いた、けれど又思えば余り忘誕《ぼうたん》な話である、頓て恐ろしさは腹立たしさとなり「エエ人を欺すにも程があります、秀子と夏子と同人だなどと誰が其の様な事を信じますものか」と叫んだ、殆どポール・レペルを攫み殺さん程の見幕で又前へ進み出た。「悪党、悪党」と罵る声は思わず余の口から洩れた、先生は怪しむ様な顔で余の顔を見「オヤ、オヤ、貴方は今まで、秀子の真の素性をさえ知らなんだのですか、秀子と夏子と同人だという事を、エ、それさえ知らずに夏子をイヤ秀子を助けたいと思い、私の許へ来たのですか。其の様な事ならば私は迂闊に此の秘密を知らせるのではなかったのです、秀子に聞き合わせた上にするのでした」余「嘘です、嘘です、夏子が牢の中で死んだ事には一点の疑いもないのです」
云い切っても先生の顔には、少し
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