ますが、監獄医大場連斎の頼みに応じ二階の空間を貸した迄で、貸した室へ大場が何を入れて置くか私の知った事では有りません」偖は彼の医学士は監獄の医者を勤めて居た者と見える、余「勿論大場の罪と云う事は逃れますまいが――」穴川「イイエ大場とても爾ほどの罪ではないのです、世間の医者が誰もする一通りの事をして居るのです」余「エ、世間一通りの事」穴川「ハイ夫は最う素人が聞けば驚きましょうが、医者と云う他人の家へ立ち入る商売から云えば当り前です。孰れの家にも随分家名に障る様な家族は有る者で、公の養育院や瘋癲院《ふうてんいん》などへは入れ兼ねる場合に医者に頼むのです。医者は頼まれて真逆に人一人を殺して了う訳にも行かず、仕方なく尤も秘密の場所を求めて隠し飼殺しにするのです。だから繁昌する医者は、大抵此のような秘密の場所を特約して有るのです」余「アノ贋医学士は其の様な繁昌する医者ですか」穴川「イヤ繁昌は何うだか知りませんが、彼は昔監獄医を勤めた丈に、人の家の秘密を他の医師よりは余計に知って居て、自然に秘密事件を頼まれることも多いのです。今居る白痴なども其の一です、成るほど白痴に対して多少は不行届きも有り、手
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