、爾だ、探偵の面白みは減ずるかも知れぬが成功の見込みは増して来る、高輪田さん千円の懸賞は遠からず私が頂きますよ」高輪田は夢中の様だ「千円が二千円でも宜しい。早く下手人を探して下さい、早く早く」と泣き声でせがんで居る、探偵は益々落ち着いて「斯う成れば最う此の土地で探すよりも倫敦で探す方が早や分りだ」と、独語にしては、高過ぎる程の声で云うた。
 此の土地の犯罪を倫敦で捜すとは余り飛び離れた言葉だから、余「此の犯罪は何か倫敦に関係が有ると云うお見込みですか」探偵「イヤ未だ何の見込みも定まりませんが、今までの経験で、小さい犯罪は其の土地限りで有りますけれど此の様な重大な異様な犯罪は必ず倫敦で取り調べる探偵に勝ちを得られます」余「では倫敦へお出ですか」探偵「ハイ、ですが、兎に角検屍官が此の死骸を何う検査するか其の結果を見た上でなければ私の実の判断は定まりません」
 斯う云って猶綿密に死骸の諸々方々を検めたが、頓て「オヤオヤ、此の様な物が」と云って、探偵は死骸の着物の衣嚢から何やら凋《しな》びた様な物を取り出した、熟く見ると彼の松谷秀子が左の手に被《はめ》て居た異様な手袋である、高輪田長三は目を見
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