ち第一に口を開いたのは探偵森主水だ、彼は独言の様に「是が愈々浦原浦子の死骸とすれば実に失望だよ」と云った、何故の失望だろう、彼は更に語を継いで「今までこうああと心に描いた推量が悉く間違って了う事になる」と云うた、此の語で見ると彼は今までお浦が未だ死んでは居ぬと思って居た者と見える。
探偵の言葉を聞き、今迄|屏息《へいそく》して居た高輪田は、螺旋《らせん》にでも跳ねられたかの様に飛び上って爾して情ないと云う声で「是が何で浦原嬢の死骸でない事は有りません、無事で居たなら今頃は私の妻ですのに」と云い、涙をハラハラと滴《こぼ》して更にお浦の死骸に蹙《しが》み附き「誰に此の様な目に遭わされました、浦子さん、浦子さん、此の敵《かたき》は必ず高輪田長三が打ちますから」と誓う様に云うたけれど首のない者が返事する筈もない。
余の叔父は最早此の有様を見ては能《よ》う居ぬと思ったか何時の間にか居なくなって了った、探偵は猶独語を続けて「併し斯う意外な事柄が現われると大いに探偵が仕易くなる、一つも捕え所がなくては何の思案の加え様もないが、兎に角死骸――而も首のない死骸が出ては是程明白の手掛かりはないのだから
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