いました、夫人は狐猿に引っ掻れたと云うのも実はあの時古釘に引っ掻れたのだろうと思います、私は過日来図書室へ入り狐猿の事を記した書籍等を調べて見ましたが狐猿の爪に毒が有るなどと云う事は何の書籍にも書いてありません」余は今に初めぬ事では有るが秀子の万事に行き届くに感心し「オオ最うお調べになりましたか、実は私も其の事を調べ度いと思って居ました」秀子「シタガ其の衣嚢は何うしました、中に確かに私の品が有りますから、縦しや夫人の秘密にもせよ私は其の衣嚢を検めて誰にも咎められる事はないと思います、エ、其の衣嚢は何所に在ります」と余ほど決心した様子である、余「其の衣嚢は最う此の家には有りません」秀子「エ、此の家にない――」余「ハイ私が夫人の頼みに応じ直ぐに小包郵便で送り出しました」秀子は今迄そう端下なく顔色など変りはせぬのに、此の時ばかりは顔色を変えて「夫は大変な事を成されました、爾して送った先は若しや蜘蛛屋では有りませんか」蜘蛛屋とは聞いた事もない名前ゆえ、余「エ、蜘蛛屋とは」秀子「ペイトン市在の」余「爾です。ペイトン市在の養蟲園と宛名を書きました」秀子「其の養蟲園と云うのが蜘蛛屋です、貴方は先ア大
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