失は何の為、依然として黒暗々だ、強いて手掛りと名を附ければ名も附こうかと思われるは堀端の土堤の芝草が一ケ所滅茶滅茶に蹂みにじられてあると云う一事ばかりだ、是は高輪田が見出したので、当人の鑑定では若しお浦が此の土堤で何等かの暴行に遭ったのでは有るまいかと云うので余の叔父は聊か賛成しかけて居るけれど、森探偵は賛成せぬ、余の意見では何しろお浦の紛失は締め切った室の中で少しの間に消えて了ったのだから、尋常一様な詮索で説き明かすことは出来まい。森探偵はそう思って居る様子だが悲しい事には其の時同じ室に居たと云う為に、秀子に疑いを掛け、時々余の前でも秀子を詮議せぬと可けぬと云わぬ許りの口調を用うる、是は余の心を引く為で有ろう、余は併し真逆に秀子が人間一人を吹き消す事が出来ようとも思わぬから其のたびに秀子を弁護するのだ。
 斯う云う様では迚も探偵が進みはせぬ、と云って外に探偵の仕ようもないから、一同余の室へ落ち合っては唯不思議だ不思議だと云う許りだ、其のうちに一週間の日は経ったが、余は医者の云うた通り寝床を離れて運動する事の出来る様になった、自分の気持では最う平生の通りで、何の様な労にも堪えるけれど医
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