のでは少しの手掛りも有りませんねエ、シテ見ると矢張り手掛りの有る方から詮議せねば」余「手掛りの有る方とは」探偵「浦原浦女の失踪です」余「お浦の紛失には手掛りが有るのですか」探偵「ハイ手掛りと云う程でなくとも、兎に角、浦女と喧嘩して、永久悔むとも帰らぬ目に遭わせるとまで威した人が有りますから」余「エ、エ、其の様な事を誰に聞きました」探偵「其の当人に聞きました。松谷秀子嬢に」余「秀子が其の様な事を云いましたか」探偵「オオ貴方がそう熱心に仰有る所を見ると貴方と秀子さんは満更の他人では有りませんネ、浦原浦女は貴方の以前の許婚だと云うし両女の間に嫉妬などの有った事は勿論の事ですネ」余は寝床の中から目を剥《む》いて「秀子は私の何でも有りません、全くの他人です、お浦の方には嫉妬が有ったかも知れませんが、若し秀子の方に嫉妬の心などあった様に思ってお調べなさっては必ず大なる違いに陥りますよ」
探偵は少し笑って「オオ忘れて居ました、貴方に今、心を動かせる様な事は云っては可けぬと医師から堅く断られて来たのです」と云って巧みに此の場を切り抜けて去って了った、後で余は倩々《つくづく》と考えたが秀子は既に自分の
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