有りの儘では秀子の身に何等かの疑いが掛りはすまいか、お浦の紛失する前に秀子とお浦との間に一方ならぬ争いが有って、秀子がお浦を永久悔むとも帰らぬ目に遭わせるぞと言い切った一条などは探偵の心へ何う響くか知らん、勿論余の知って居る所では、お浦の紛失は秀子の仕業ではない、お浦が床の上へ仆れると同時に秀子は余の傍へ馳け附けて来た、其の後でお浦が紛失した、爾して秀子は暫く経って後までもお浦が何処かへ隠れて居るのだと信じて居た事は其の時の挙動に分って居る、それだから秀子がお浦の紛失に関係のない事は余がそれに関係のないのと同じ事だけれど、探偵はそうは思うまい。
余はお浦と秀子との争いを何の様に言い立てて好いか未だ思案が定まらぬに探偵は早や余の枕許へ遣って来た、幸いに彼は秀子の事を問わぬ、余の刺された件のみを問い始めた、余は有りの儘を答え、全く壁から剣が出た様に思ったと云い、猶刃物や毒薬の事に就いては医師の説を其のまま繰り返して耳に入れた、彼は職業柄に似合わず打ち解けた男で、自分の意見を隠そうとせず「イヤ毒薬などの事は、来る道筋で医師の家を尋ねて聞いて来ました、けれど貴方自身が壁から剣が出た様だと云う
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