秘伝まで知った刺客が徘徊する室では実に安心が成りませんから、之は丸部さん、其の筋の探偵に詮議させずには置かれますまい」と末の一句は叔父に向って忠告の様に云った。
叔父は其の言葉に従い翌日直ぐに倫敦へ電報で探偵を一人注文して遣った、翌々日に注文に応じて来着した探偵は、森|主水《もんど》と云って、此の前にお紺婆の殺されたとき此の家へ出張して犯人夏子を取押えた人で、此の幽霊塔の境内の地理や家の間取りなどは充分に知って居るとの事だから最も妙だ、所が此の人の来着して後までもお浦の姿は現われぬ、消えてから既に二昼二夜になるのだから愈々以て唯事ではない、依って森主水は、余の刺客を調べると同時にお浦の消滅の次第をも取り調べる事になった、森の心では或いは此の二事件の間に何等かの連絡がある者と思ったかも知れぬ。
第三十三回 千円の懸賞
森探偵は其の道に掛けては評判の老練家ゆえ、余の刺された件に就いてもお浦の消滅した件に就いても遺憾なく取り調べるに違いない。
彼が余の寝室へ上って来たのは、既に下で以て秀子に様々の事を聞いてから後であったとの事だ、余は何と問わるるも有りの儘に答えねば成らぬ、が、若し
前へ
次へ
全534ページ中152ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
黒岩 涙香 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング