は熟々《つくづく》と考えたが実に奇妙だ、何うして消えたのか到底想像する事も出来ぬ、併し明日にもなれば現われて来るかも知れぬ、ナニ現われて来ずとも少しも構いはせぬ、あの様な横着な女を寧ろ是きり現われて来ぬ方が幸いかも知れぬけれど、若し現われて来れば何うしてアノ室で身を掻き消したかと云う次第が分る、お浦に逢い度くはないが其の次第だけ知り度い。
 併し猶能く考えて見ると、お浦の紛失よりも余の怪我の方が一入不思議だ、アノ室にはアノ時余の外に誰も居なんだ、今思うと刺される前に余の背後で微かな物音が聞こえたかとも思うけれど、刺された後で逃げ去る人の姿さえ見えなんだ、宛《あたか》も壁から剣が出た様に思った、果して壁から剣が出れば剣の出る丈の穴が壁になくては成らぬけれど無論其の様な穴はない、爾すれば余を刺したのは目に見えぬ幽霊の仕業か知らん、昔から奇談は多いが、目に見えぬ一物に刺されたと云う事は聞かぬ、既に是だけの不思議な事が有って見ればお浦の身体が消えたのも怪しむには足らぬ。
 其のうちに叔父は医師と共に又上がって来た。医師の診断に由ると、余の傷は剃刀よりも薄い非常に鋭利な両刃の兇器で刺したのだと云
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