らしいでは有りませんか、此の様な場合に何所かへ隠れてお了い成さってサ」と云い捨て、其の鍵で戸を開けて出て行った、余は其の後で何もお浦に来て貰い度くはないけれど、或いは介抱に来るかと思い、絶えず次の室を見て居たけれど遂に遣って来ぬ、去ればとて秀子が開け放して行った出口から出で去る様子もない、扨は日頃の捻けた了見で又も何事をか企んで居るのかと思ううちに、秀子が二人の下部を連れて帰って来て「オヤ浦子さんは私の後でも未だ貴方のお傍へ来ませんか」と云いつつ余の傍へ跼《ひざま》ずいた、余は二人の下部に余の身に手を着けるより前に先ず次の間でお浦を探して引き出して来いと命じたが、下部は怪しみつつ捜した、隅から隅まで凡そ人の隠れるに足る物影は悉く捜した様子だけれど、お浦は居ぬ、全く蒸発でもして了ったかと云うほどにお浦其の者がなくなった、跡方もなく消えるとは此の事だろう、或いは秀子が、悔むとも帰らぬ目に逢わせると云ったのが此の事では有るまいか、何の様な手段かは知らぬがお浦の身体を揉み消したではなかろうか、併し其の様な事をする暇もなかった。

第三十二回 専門の刺客

 余は直ちに、二人の下部に舁《かつ》が
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