様な場合では有りません」猶もお浦は音沙汰なしだ、秀子「今の喧嘩は私が悪かったから、ヨウ浦子さん、茲へ来て下さいな、私一人では何うする事も出来ません、私の秘密などは最う何うなさろうと貴女の御勝手ですからサア、浦子さん、浦子さん、それほど私の傍へ寄るがお否ならサア今の鍵を上げますから、之を以て戸を開き、早く誰かを呼んで来て下さいな」と云って鍵を次の間へ投げて遣った、けれどお浦は返事をせぬ、秀子は非常に当惑の様子で「本統に仕ようがない事ネエ、此のままで丸部さんをお置き申せば益々血が出て何の様な事に成るも知れず、早く寝台へでもお移し申して充分の手当をせねば、と申して私の力では貴方を抱き上げて行く事も出来ませず」とて、途方に呉れて四辺を見廻した上「では私が行って誰かを呼んで来ましょう」と云い、其の辺の卓子に掛って居た獣の皮を取って巻き、それを枕として余の身体を穏やかな位置に直し、爾して自分で立って行ったが、其の巧者な塩梅は専門の看護婦にも劣らぬ程だ。
 余の居直った所から次の室の出口は一直線に見える、余は秀子が何うするかと見て居ると、今投げた鍵を拾い上げて、室の中を見廻し「先ア浦子さんも余り子供
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