様な返事は出来ません」お浦は恨めしげに「私は、斯まで貴方に嫌われる様な厭な女でしょうかネエ、あの高輪田さんなどは、私の外に女はない様に云い蒼蝿《うるさ》く縁談を言い込みますのに」余「夫は爾でしょうとも、貴女は立派な美人ですもの、余所へ心の傾いて居ぬ人なら必ず貴女に心を寄せますよ」お浦は忽ちに怒って立ち上り「分りました、余所へ心の傾いて居ぬ内なら承知も仕ようが己は最う松谷秀子を愛して居るからお前の言葉は聴き入られぬと、斯う仰有るのですね」余「そう云うのとも違いますけどナニそうお取り成さっても大した間違いは有りません」お浦は大声に「エ、悔しい、あの怪美人めが人の所天《おっと》を偸んで了った」と叫び、身を掻きむしる様にして、悶き悶き窓の許へ走って行って、窓から外へ飛び出して庭の面を遠く、堀の方へ馳せ去った、定めし身を投げるかの様に見せ掛けて、余に走り出させて留めさせ度いと云う狂言だろうが、今まで散々お浦の狂言に載せられた余だもの、最う其の手を喰うものか、余は邪魔者を追っ払った気で其のまま次の室へ入り、散らホって居る本箱の間を潜り、先ず壁の際に在るのから順に調べる積りで、但《と》ある本箱の横手
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