へ蹐《しゃがん》だが、此の時壁の中からでも剣が突き出た様に、忽ち余の傍腹を斜めに背後の方から衝《つき》刺したものがある、余は咄嗟の間にそうまでも思い得なんだけれど不意に傍腹へ鋭い痛みを感じ、其の所へノメッて了った、傷は爾まで甚いとも思わぬけれど、切口は宛で火の燃る様に熱く痛い、爾して殊に奇妙なは、助けを呼び度くも声が出ぬ、傷口を押え度くても手が動かぬ、手ばかりでなく足も胴もイヤ身体じゅう一切の感じが麻痺したと見え、倒れたままで少しの身動きさえも出来ぬ。

第三十回 此の様な、此の様な

 余は何故に、何者に、斯くは刺されたのであろう、是既に容易ならぬ疑問であるが、是よりも猶怪しいは余が創《きず》の小さい割合に痛みが強く、爾して其の痛みの為に全身が痺《しび》れて了った一事である。人の身体が、斯も痺れる者とは今まで思い寄らなんだ、声の出ぬのは勿論の事、瞼までも痺れて仕舞い目を開き度くとも開く力さえなく、強いて開こうとしても瞼が直ぐに弛く垂れて眼を蔽うて了い、唯|辛《ようや》くに糸ほど細く開いた間から外の明りを見るに過ぎぬ。
 曾て或る書物で読んだ事がある、印度の或る部落に住む土人が妙な草の
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