見届けた上で少しでも怪しむ可き所があれば、第一に秀子に話して虎井夫人が此の甚蔵に送った小包が果して秀子の盗まれた手帳であるや否や究めねばならぬ。
 併し養蟲園へ行く前に、一応調べて見たいのは狐猿の爪に果して毒があるや否やの一条だ、若し毒が有って、之に引っ掻れたなら古釘で傷つけられたと同様の害を為すと云う事でも分れば、虎井夫人に対する余の疑いは大いに弱くなる。
 余の書斎には斯る事を調べる丈の参考書はないけれど当丸部家の書斎には必ずある、尤も引越※[#「※」は「つつみがまえの中に夕」、読みは「そう」、64−上6]々で未だ書斎は整理して居ぬ、けれど其の室だけは定《きま》って居て、既に本箱などをヤタラに投げ込んである、其の室は昔此の家の主人が自分の居室にする為に建てたので、相変らず内部に様々の秘密な構造が有ると言い伝えられて居る、此の言い伝えさえなくば叔父が自分の居室とする所で有ったが叔父は秘密などのある室は否だとて到頭書斎に充《あ》てたのだ、室の内部は三所に仕切って有って書斎には余り都合が好くないけれど仲々立派な普請である。
 余が此の室へ入ろうとする時、室の中に人声が有って、戸を開くと、
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