、若し悪人が其の手帳を見て咒語を解釈でもすれば大変です、是非とも悪人より先に貴方か私かが解釈せねば、夫は最う貴方に取っても阿父様に取っても、又私の身に取っても取阨ヤしの附かぬ事に成ります」余「其の手帳を盗んだのは悪人ですか」秀子「誰だか少しも分りませんが、何うせ人の手帳など盗むからは悪人でしょう、殊にアノ咒語を解釈して、爾して何か利益を計ろうと云う人に違い有りません」余「イヤ盗んだとて決して解釈は出来ますまい、貴女が毎日考えてさえ分らぬ程の、咒語ですもの」秀子「左様、咒語の本文と図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、60−下10]の原図とを見ねば幾等智恵の逞しい悪人でも悉く合点する事は出来ぬだろうとも思われます、けれど私の手帳を見れば、何れほど私が苦心して居るかが分り、これほど苦心するのだから必ず苦心する丈の値打ちはあると、是だけは見て取ります」
 余は何うも秀子の云う事が充分には合点行かぬ、アノ咒語に解釈の出来るほどの確かな意味が籠めて居ようとも思わず、縦し解釈した所で此の家の為になる事もなかろう、従って他人に解釈せられた所で爾まで害にも成りはしまいと唯
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