之ぐらいに思う丈だ、秀子「誰が盗んだか、実に分りませんよ、若し昨夜変った事でも有りはしませんでしたか――」余「イエ別に――」と言い掛けたが忽ち思い出して、「ナニ大変な事が有りました」とて幽霊の一部始終を語った、秀子は直ぐに合点して「其の幽霊が盗坊《どろぼう》です、溜息を吐いたり壁を撫でたりするのは貴方を威《おど》かして、此の室で寝ぬ様にさせ、爾して又|緩々《ゆるゆる》と来る積りです、血の落ちて居たのは必ず其の盗坊が何うかして怪我をしたのでしょう」
成るほど爾だ、少しも疑う所はない、余「イヤ貴女の眼力には感心です」秀子「イエ眼力ではなく、熱心です、熱心に心配して居る者ですから此の様な考えが附くのです、けれど丸部さん、貴方が此の室を退きさえすれば幽霊は必ず毎夜の様に此の塔へ上って来て私の手帳に引き合せて此の塔を研究します、貴方は此の室を空けては可ませんよ」余「併し恐れた振りをして誘き寄せ爾して捕えるのも一策では有りませんか」秀子「イイエ夫は非常に危険です。最う一夜でも其の幽霊を再び此の塔へ上らせたら何の様な事をせられるかも知れません」と云って少し考え、考え「貴方が、若しお厭なら、貴方は下
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