ば助けもするが、当人の様子から考えると目に見える危険より目に見えぬ危険の方が定めし多かろう。
 余は此の様に思いつつ秀子を家の内へ送り入れた、頓て朝|餐《さん》も済み、又一回り運動して、爾して愈々昨夜(寧ろ今朝)出た幽霊の跡を検めて見る積りで塔の四階へ上って行ったが、余よりも先に秀子が居て、物思わしげに廊下を徘徊して居る、余は「何うかしましたか」と問い掛けたが秀子は返事をせず眼で以て差し図する様に、余を連れて余の室へ這入り、少し、言葉を更めて「貴方が此の室を居間に成すったのは私の言葉に従って下さったのではありましょうが――」余「全く爾です」秀子「貴方は此の外の事も私が申した通りに仕て居らっしゃるのですか」余「此の外の事とは」秀子「此の室で丸部家の咒語や図※[#「※」は「たけかんむりの下にかねへんの碌」、読みは「ろく」、60−上10]などをお見出し成さったでしょう」余「ハイ見出しました」とて見出した時の様を掻摘《かいつまん》で話した、秀子「爾して其の咒語を暗誦なされましたか」余「イヤ暗誦はしませんが長くもない文句ですから大方は覚えて居ますよ、何でも明珠百斛、王錫嘉福、妖※[#「※」は「か
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