事には成ったが、或いは夏子の生存中に、夏子から何事をか頼まれたので有ろうか、夫で此の墓へ度々参るのでは有るまいか、孰れにしても余は最う助けずには居られない。
第二十七回 目に見えぬ危険
若し公平に考えたら、秀子の身には定めし怪しむ可き所が多かろう、密旨などと云うも分らず、夏子の墓へ参るも分らず、高輪田長三から異様に疑われて居る其の仔細も分らぬ、併し余は少しも疑わぬ、第一秀子の美しい顔が余の目には深く浸み込んで居る。決して人に疑われる様な暗い心を持った女でない、成るほど自分で云う通り何か密旨は帯びて居るだろうよ、併し人を害する様な質《たち》の悪い密旨では決してなかろう、第二には秀子が曾て「分る時には自然に分る」と云ったのを余は深く信じて居る、自然に分る時の来るを何も気短く疑って見るには及ばぬ。
斯う思うと唯可哀相だ、女の身で兎も角も密旨の為に働き「何の様な目に逢って此の世を去るかも知れぬ」とまで覚悟して居るとは傷々《いたいた》しいと云っても好い、助けられる者なら助けて遣り度い、と云って事情も知らず、自分の妻でも何でもないのに深く助ける訳にも行かぬ、今日の様な目に見えて危い事が有れ
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