あた》る事は出来ません、私に保護させて下さいな、深い仔細は知りませんけれど此の後とてもお独りでは心細い事ばかりだろうと思われます、保護する丈の権利を私に与えてさえ下されば」と云い掛けると、秀子は恟《びっく》りして余より離れ「貴方も矢張り権田さんの様な事を仰有る、保護して下さるは有難くとも私は其の様な約束は出来ません」実に余は権田が秀子に言うた通りの事を言い度くなった、心に権田を笑った癖に唯一夜明けた丈で自分が其の権田に成り代わるとは成るほど秀子が承知の出来ぬ筈だと思い「イヤ夫では最う其の様な事は言いませんが、貴女は今私の出て来たのを有難いとお思いですか」秀子「夫は思いますとも、貴方が来て下さらねば私の生涯は此のまま盡きる所だったかも知れません」余「夫ならば貴女から何の約束を得ずとも此の後私は影身に成って守りましょう」秀子「でも私から何うぞとお願い申す事は出来ません、私は自分で密旨を果たさねば成らぬのですから、ハイ多分は果たし得ずに、何の様な目に逢って此の世を去るかも知れませぬけれど、固く心に誓って居るのだから致し方が有りません」と云う中にも眼は涙に閉じられて居る、何の密旨だか愈々分らぬ
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