は又もX光線の様に、秀子の彼の真珠を以て飾った左の手の手袋へ注いで居る。
第二十五回 之が幽霊か知らん
秀子と長三との対面が、兎も角も秀子の勝利となって終ったは嬉しい、けれど余は何となく気遣わしい、猶何所にか禍の種が残って居はせぬか、再び何か不愉快な事が起りはせぬかと、此の様な気がしてならぬ、其の心持は宛も、少し風が吹罷《ふきやん》で更に此の後へ大きな暴風《あらし》が来はせぬか、此の凪《なぎ》が却って大暴《おおあれ》の前兆ではないかと気遣われる様な者だ。
此の気遣いは当ったにも、当ったにも、実に当り過ぎるほど当った、読む人も後に到れば、成るほど当り様が余り甚すぎると驚くときが有るだろう、併し夫は余程後の事だ。
此の夜は事もなく済み、客一同も「非常の盛会であった」の「充分歓を盡した」のと世辞を述べて二時頃から帰り始めた、余も頓て寝床に就く事になった。
寝床と云うは、彼のお紺婆の殺された塔の四階だ、時計室の直ぐ下の室である、余自ら好みはせぬが秀子の勧めで此の室を余の室にし、造作なども及ぶだけは取り替えて何うやら斯うやら紳士の居室《いま》らしく拵らえてある、初めて見た時ほど陰気な
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