を相続人にすると斯う云った、随分下品な仕方では有るけれど下女から出世したお紺婆としては怪しむに足らぬのさ、夏子は自分が相続人でなくなるのを甚く辛がって、泣いたり詫びたりしたけれどそれでも長三の妻に為るとは云わぬから、お紺は詮方なく愈々遺言状を書き替えるに決心し、倫敦へ代言人を呼びに遣った、其の代言人が明日来ると云う今夜の十二時にお紺は何者にか殺されて了ったが、調べの結果様々の証拠が上り終にお夏の仕業と為った、お夏は固く自分でないと言い張ったけれど争われぬ証拠の為前に記した通り有罪の宣告を受け終身禁錮の苦刑中に牢の中で死んで了った、此の事件に長三も調べられたけれど彼は当夜倫敦に居た証拠も有り、又お紺を殺して少しも利益する所はなく、却って明日迄お紺を活せて置かねば成らぬ身ゆえ勿論疑いは直ぐに解けた、爾してお紺の財産は罪人夏子の物に成ったけれど、夏子死すれば夏子の子へ夏子に子なくば長三へ、と遺言状の中に但し書きが有った為、夏子が牢死した時に長三の物に成ったと云う事だ。
 是だけが余の知って居る長三の履歴である、けれど此の様な事は何うでも好い、話の本筋に立ち返ろう。
 高輪田と秀子とが全く見知
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