ことさえも確かだから、無論良家の処女である、夫を疑ったお浦も無理だ、一時たりとも此の試験に落第するかの様に心配した余とても余り秀子に対して無礼すぎた。
古い事を説く様では有るが、聞く所に由ると此の高輪田長三は幼い頃からお紺殺しの夏子と云う女と共にお紺婆に育てられた男で、お紺婆の心では夏子と夫婦にする積りで有ったのだ、所が何う云う訳か物心の附く頃から夏子が長三を嫌い、何うしても婚礼するとは云わぬ、婆は色々と夏子の機嫌を取り、遂に夏子を自分の相続人と定め、遺言状へ自分の財産一切を夏子の物にすると書き入れた相だ、夏子は大層有難がって婆には孝行を盡したけれど長三を嫌う事は依然として直らぬ、長三は婆が自分を相続人とせぬのを痛く立腹し、是から道楽を初めて果ては家を飛び出し倫敦へ行ったまま帰らぬ事に成った、婆は余ほど夏子を大事にして居た者と見え、長三が家出の後でも猶夏子を賺《すか》しつ欺しつし、遂に其の手段として、自分の所有金を悉く銀行から引き集め、それを夏子の目の前へ積み上げて、此の家の財産は現金だけでも是ほどある、和女が長三の妻に成れば、之は総て和女の物だし若し否と云えば遺言状を書き直して長三
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