を助ける事の出来る人はないのです」余「でも権田は貴女の応じ得ぬ様な無理な報酬を迫るではありませんか、私ならば、貴女を妹と思って助けます、尤も何時までも妹と云う丈で満足する事は出来ぬかも知れませんけれど」秀子は打ち萎れた仲から異様に笑みて「オホホホ、妹と云う丈で満足の出来ぬ時が来るなら権田さんも同じ事です、生涯愛などを説かぬ男は此の世にないと断念《あきら》めました」斯う云って余を振り捨てた。
けれど余は猶も後に随って行ったが、秀子は愈々舞踏室へ歩み入った、果せる哉だ、第一に秀子の前へ遣って来たのはお浦だ。大敵――だろうと余の鑑定する――高輪田長三も一緒である、余の叔父も附き添って居る、秀子は高輪田長三に逢うのを覚悟の上で茲へ来たのか、夫とも長三に逢いは仕まいと油断しての事だろうか、或いは又逢って見破られるなら夫までと絶望の余り度胸を据えての事だろうか、余は心配に堪えられぬ、若し秀子が実は古山お酉で、茲で高輪田に見破られる様なら、全く姿を変じて人を欺くと云う者で、女詐偽師も同様だから少しも憐れむには及ばぬとは云う様な者の、夫でも何だか気懸りに堪えられぬ、若しも高輪田長三の口から無礼な言葉
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