迫で有るけれど、破落漢《ならずもの》が貴人の秘密を手に入れて強談するなどとは調子が違う、殆ど兄妹の様な親密な言葉附きで互いに何も彼も知り合った仲の様だ、実に不思議だ、若し此の二人の間柄の委細が分れば秀子の身の上の秘密、所謂「密旨」「密命」など云える事の性質も分るだろう、けれど二人の間柄の委細は勿論知る可き道がない、余には想像さえも及ばぬ。
 秀子は余の蔭に寄り添うたを恥ずかしく思ったか、権田の立ち去ると共に身を退いて、舞踏室の方へ行こうとする、其の様子は余ほど打ち萎れて居る、余は其の前へ廻り「秀子さん、私は立ち聞きしたのでは有りません、私の居る所へ貴女と権田君とが来て、私は立ち去る機会を失ったのです」秀子は簡単に「ハイ貴方が立ち聞きの為に茲へ来たとは思いません」余「ですが秀子さん、貴女は今、男が無報酬で女を助ける事は出来まいかと此の様にお嘆き成さったが、他人は知らず此の丸部道九郎ばかりは全く兄と妹の様な清い心で、貴女を助け度いと思います、貴女の敵とか運の盡きとか云うのは何ですか、助ける事の出来る様に私へ打ち明けて下さらば」秀子「イイエ貴方では私を助ける事は出来ません、権田さんの外には私
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